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9/24(日)『光』早織さん、田中正子さん舞台挨拶

9月24日(日)、映画『光』上映後に、出演された早織さんと、田中正子さんを招いて舞台挨拶を開催致しました。

9/24(日)『光』早織さん、田中正子さん舞台挨拶

ゲスト:早織さん…石田早織役(早織)
    田中正子さん…正子役(正子)
進 行:平塚千穂子…CINEMAChupkiTABATA代表(-)

-ゲストのお二人がお越しになっていますのでお呼びいたします。出演者の早織さんと、田中正子さんです。どうぞ拍手でお迎えください。

(会場拍手)

-(盲導犬を連れた正子さんに注目して)正子さんがね、盲導犬ユーザーだったというのは映画を観ただけでは分かりにくかったと思うんですけど(笑)小さな劇場でお客さんとものすごく近い距離ですけど…だからこそそういう空間でお客様との交流を是非と思っています。後ほどお客様へ質問などありましたらお願いしたいと思います。では、宜しくお願いします。早織さん、お久しぶりです!(笑)

早織:お久しぶりです!今日は宜しくお願いします(笑)

-1年前くらいに早織さんの出演が決まりまして。

早織:そうですね、昨年(2016年)の夏に『光』の出演が決まりました。河瀬監督が「次の新作の出演者を探している」というお話がありまして、配給会社の女性の役のことを当初聞いてたのですが、実際に河瀬監督と面談したときに別の役を提案されました。河瀬監督にお会いするとなると、それはもう!緊張しましたよ(笑)

-特に、早織さんが女優になるきっかけをくださった方だからですね。

9/24(日)『光』早織さん、田中正子さん舞台挨拶

早織:そうなんです。14歳のときに、そのころ京都に住んでいて、中学生だったんですけど、たまたま関西圏で女の子を募集しているオーディションがあって、それを受けに行って河瀬監督にお会いして、そこの最終審査まで残った時に河瀬監督が「あなたは女優に向いてるよ」とおっしゃって、その言葉が、私にとって大きなキッカケになり、その言葉で一念発起して女優の勉強をはじめようとなったのがもう十四、五年前!その言葉をずっと大切に、今まで女優の仕事をしてきたのですが、14年越しにやっと河瀬監督にお会いできることになりまして、その面談日に2人でお話しした際「配給会社の人の役もあるんだけれども、あなたにはモニター会に参加している女性の役をやってほしい」とお話をいただきました。私その時点で役の話をいただけるとは思ってなかったんです。この後、審査があるのかなと思ってたのですが(笑)

-先日、神野三鈴さんがいらっしゃった時も「あれっ?もう決まってるんですか?」というタイミングで役が決定したとうかがいました(笑)

早織:そこで「あっ、はい、わかりました!」という感じで、即答しました(笑)音声ガイドをつくるときに、モニター会の参加している女性の中に、私と近い感じの女性がいたそうなんです。監督からは「早織にはこの役をやってほしい」といわれて…あとは、私が感じるままに演じました。

-それで、視覚障碍者の役を演じられたわけですけど。演じるにあたって、City lights(シティ・ライツ)という私たちの団体で、実は正子さんもシティ・ライツのメンバーなんですけど、視覚障碍者役を演じる早織さんと、あと、先日チュプキにいらした小市慢太郎さんと、実際の視覚障碍者の方々とチュプキの2階の部屋に集まっていただき、交流会のようなことをしたんですよね。

早織:そうですね、あと、音声ガイドのモニター会の再現というのをやって、そこで水崎綾女ちゃんが入り、河瀬監督の映画『あん』を観ながら水崎さんが自分でつくってきた原稿に対して、正子さんをはじめ、シティ・ライツのメンバーが、原稿のダメ出しをする会というのがあったんですよ(笑)

-正子さんは…そこからですよね?

正子:そうですね、はい。正子です(笑)宜しくお願いします。

-正子さん、そのときの擬似モニター会というか、テストモニター会の時の、覚えていること等を教えていただきたいんですけど。

9/24(日)『光』早織さん、田中正子さん舞台挨拶

正子:そうですね、ディスクライバー役の水崎綾女さんが、急にこの役をやると決まり、急に音声ガイドの原稿を書くことになって、本当にぶっつけ本番みたいな感じで書いて来てくれたのですが…ダメ出しはいっぱいしてしまいました(笑)で、美佐子さんが「うまくできない!くやしい!」っていう想いでポロポロ涙を流されて「どうやったらできるようになるんだろう…頑張る!」という感じで泣いておられたのが本当に昨日のようです(笑)

-テストモニター会というのは、セットにしても、どのように撮っていくかというプラン決めもあって、やってほしいって言われて、美佐子(水崎綾女)さんにも「モニター会というのはこういうものですよ」というのを知っていただくというのもあったので、私たちはこの会が終わったらもう奈良で撮影という風に聞いてましたし、これで私たちの役目はこれまでだろうなと思っていたら、正子さんがね、モニター会で、まぁ映画の中でもすごい心に刺さるような言葉をおっしゃってましたけど、その時点で「私たちはもっと広い世界を見てるんです」っていうお話をされたのを、河瀬監督がすごく印象に残ってらっしゃって、正子さんに「是非奈良へ来てください」っていう話に繋がったということなんですよね。

早織:急なキャスティングでしたね。

-ねー、本当に(笑)

早織:そこのモニター会の中で、正子さんが、出演者の方々それぞれに、色のイメージを言ってくださったのが私はすごく印象深かったんですけど、座った席で、人の感じを色で言ってくださったんですが、監督は「赤」、神野さんは「オレンジ」とあったんですが、正子さんにそのイメージがあったんですか?

正子:私だけかもしれないけど、周りの人やものをイメージする時に、色をつけちゃうことがあって「この人は何色、この人は何色」っていうような、何か感覚として感じてしまうものがあります(笑)何故と聞かれたら、よくわかりません。

-その人の着てる服は全然違う色なんですけど、河瀬監督は「赤」というのも、奥の情熱の強さとかそういうものを現わしていたと思うし、早織さんは「白」でしたよね?

早織:そうなんですよ。白だったんです。本当にびっくりして…当時は黒い服を着てたと思うんですけど(笑)

-でも「白」と言われると、あっ、内面はそうかも!ってなりますね。

早織:それは、言葉から受け取る感じなのか、音なのかなぁとか想像してしまいますけどね(笑)

正子:もう、並んだ順番で、私はそんな風にみなさんに色をつけてしまって想像してました(笑)そんな話をしたんですよね。

-早織さんは、目が見えない役を演じるにあたって、何か苦労されたことはありますか?

早織:やっぱり「どう演じたらいいか、わからない」というところから始まって…でも私は女優として真に近づく努力をする。それが仕事なので、まずは白杖をずっと携帯して白杖の使い方も教えていただいて、あと、設定としては私は先天性ではなく、中途失明の方の役ということで、河瀬監督からいただいたので、該当する方からお話を聞いたり、ものを取る時に、上から取るんではなく、下からこう探るように取っていくという仕草を具体的に教えていただいたりしました。

正子:すごく印象に残っていることがあって、早織さんが撮影中ずっと視覚障碍者の役だったので、もうなりきっていて、昼食食べるのに別室に移動する時に何かスタッフさんが走って行って「誘導しましょうか?」って言ってたんですね(笑)

-杖使われてましたよね。本当の視覚障碍者だと思ったんでしょうね(笑)

9/24(日)『光』早織さん、田中正子さん舞台挨拶

早織:なんだか現場に溶け込めてたようで(笑)私は瞼を閉じて演じていたので実際のところ自分がどのように撮影されていたのかよく知らないんですよ(笑)で、試写で見て「こんな風に撮られていたんだあ」とやっと認識した感じです。

正子:「誘導しましょうか?」ってスタッフの方から言われた反応も、「あっ、私見えるんでした(笑)」っておっしゃってて(笑)

(場内爆笑)

-そこまでなりきっていたんですか(笑)小市慢太郎さんみたいにコンタクトを入れてたりはしなかったんですね。

早織:はい。河瀬監督の演出で、「早織は瞼を閉じている方で」という役回りをいただきました。視覚障碍を持っている方には、瞼を閉じている方とそうでない方がいらっしゃいますがどうしてなのでしょう?と聞いたとき、長らく目を使わなくなると、徐々に瞼の筋力が衰えてくるので閉じてる方が多いと。「あっ、そうなのか」とそこにヒントを得て、演じる際には顔面の上半分にはあまり力を入れないようにしました。

-ずっとそういう風にしていて、何か気付かれた事ってありますか?

早織:言葉と言葉のコミュニケーションというか、言葉を贈ったり言葉を受けとめたりすることの信頼関係というか、それによって「心が解放」されていく感じを覚えました。例えば視えている時は、相手の顔色をうかがったり、考えすぎてしまいがちでしたが、瞼を閉じた世界に居てみなさんとお話ししたり、出会ったりしてると、何だか知らぬ間にのびのび話していてすごく楽しかったです。なので、お話しした内容をより覚えています。

正子:最初は、早織さんという役名ではなかったんですよね…たしか「まき」さん…

早織:ああ、そうですね。確か「石田まき」という役名だったんですけど。

正子:でも、今回は早織さんがあまりにもそのままの存在でいらっしゃったので監督が「もう、早織でええわ。」って(笑)

(場内爆笑)

-正子さんと同じで「その(本名の)ままでええわ」となったんですね(笑)河瀬監督と何かこう、印象深いエピソードはありますか?

早織:私の場合は、「こうして、ああして」って言われる事はあんまりなかったんですよね。なので、私が(映画の)この状況ならどう思うか、振る舞うかを感じとろうと努めました。河瀬監督の前では、へたな嘘はつけないですね。繕ったらばれてしまう気がします。

-やはり、そこでしょうね。では、ちょっと皆さんから質問を受け付けたいと思んですけど、いかがですかね?

お客様A男性:正子さんが、役の中で、「広い世界を見ているんです」って台詞があって、そういう話をモニター会の時に出てというお話を聞いて、早織さんがどういう風に自分の中で世界の見方が変わっていったんだろうなという話を今、お話を伺いながら聞いて、「解放」されたっておっしゃってましたね。これが自分の中でずっと繋がって行ってですね。とてもいいお話が伺えたなと思ったんですけども、もう少しその辺をお話いただけたらと思います。正子さんの「広い世界を見ている」につながった話をもし伺えたらとありがたいです。

正子:この映画の中でも、世界にいます。同じ音を聞いて、同じ空気を吸っているんですけど、台詞は全部アドリブでして…私には台詞がなかったので、もうそのまま喋ってます。で、あの通りなんです。私は映画を観ていて、スクリーンを観ている感覚はありません。その(映画の)世界に入っていまして、例えば、主人公が車を運転しているとなると、後部座席あたりに自分が乗っていたりします…の、ような感じで、なんだろう、その世界にどっぷり入り込んで観るタイプだと自分では分析しています。

-正子さんはモニター会で「じゃぁ、正子さんどうですか?」って聞くと必ず、「ちょっと待ってください、今海から戻って来ますから」とか「今砂丘にいますのでちょっと待ってください」って(笑)

(場内爆笑)

-正子さんはモニター会の現場でもそのように言いますよね(笑)早織さんはいかがでしょうか?

早織:「広い世界にいる」という感覚は正子さんの言葉で、想像の仕方はその人固有のものかなあと。私自身にとっては、普段の私の世界から広がったという感覚で、それは、見えているから縛られていること、実は見えているようで見えていない。そこからの「解放」かなっていう感じがしました。

9/24(日)『光』早織さん、田中正子さん舞台挨拶

-「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」って体験された事ありますか?早織さんがおっしゃってたようなことを体験された方がいらっしゃって、完全なる暗闇での体験ワークショップなんですけど、そこで視覚を閉ざした時に、心が開かれていくという事が…複数の人でグループ行動をするそうなんですが、仲良くなっちゃうんですって、何かこれも心の「解放」というんでしょうか、「自分がつくっている枠(わく)とかで心を閉ざしているものが開かれている感じがあった。」、と被験者の方がおっしゃっていました。

早織:お話は聞いていたんですが、私行った事ないんですよ。何か、声を発さないと、相手に届かないし、もっとリアルな…切実なことというか「今私こう感じているんです」とか、それを言葉にしていくことで、自主性も生まれてきます。当たり前のような、声を発するということが、ひとつの生きる技術として大切なことなんだと感じられました。

-ものを認識するのに触る、とかですね。そのために対象と距離が近づくといいますか…能動的に、自分から探りに行くって感じですかね。

早織:「残り10分」というカンペが出ましたけど(笑)

-じゃぁ、他のお客様から、どうぞ(笑)

お客様B男性:映画、とても素晴らしかったです。私は障碍者の方に訪問介護等をさせていただいている者です。視覚障碍者の役をやるにあたり、この映画を通して、あとは自分の実際の生活から何か社会に対してメッセージというか、そういったものをちょっとお聞きしたいと思うんですけど。点字ブロックの上とかでも自転車が違法に駐輪されてたりとかしてて、どうなのかな?と思う事はあるんですけど、あと、やはり3年後に2020年東京パラリンピックもあるので、こういった映画が、ますますいろんな所で上映されていって、障碍者にも色々な方がいらっしゃいますけども、一人一人が思いやりをもって共生社会の実現に向けて映画が何かの役に立っていけるのかなと感じました。

9/24(日)『光』早織さん、田中正子さん舞台挨拶

早織:ありがとうございます。私、何か出演したことで、その映画を通して何かを糾弾したいという気持ちはないんですね。映画を観てくださった方が、人や何かとのつながりに「光」を感じ、それを少し確かめるということだけでもいいんじゃないのかなと。自分の心に「光」があるならばそれをどのように携え続けられるだろうかと、思いを馳せる。そこがとても大切なのではないのかなってこの撮影後の1年間を見つめていたんです。生きているといろんな事があるので、その「光」は弱まったり強くなったりするんですけど、この映画を見るとその「光」が維持できるのではないかと、希望が湧いてくる、そこのところが見てくださった方に届けばいいなと思っています。

9/24(日)『光』早織さん、田中正子さん舞台挨拶

正子:私は、監督がこの映画で、カンヌで受賞されたエキュメニカル審査員賞というんですけど、受賞された時のコメントで「精神的な弱点と思われているような事だとか、弱さなどが実は、とてもプラスになるというか、前を向かせるものだったり、つながりを確認したりするものだったり、そういう人間の可能性につながっていくものなんだ」っていうようなコメントを監督が言っておられて、それが素晴らしいなぁと思いました。そして、失明していくカメラマンを主人公にしている映画なんですけど、その「失明」、明かりを失うと書くはずの出来事にこの映画は「光」というタイトルがついているというのも、監督のセンスが素晴らしいなと思い、私は演じています。「光」は見えようと見えまいと、どんな人の上にもあるもので…というメッセージが込められているんじゃないかなと私は最近感じています。

-では、奥の席のお客様も、いいですか?(笑)

お客様C男性:お久しぶりです。去年座談会に参加させていたきました者です(笑)ちょうど夏、公開の時にトークショーをバルト9でさせていただきまして、今日2度目観る事ができて良かったですし、また『その砂の行方』も観ることができて楽しませていただきました。って、何でしたっけ?(笑)

-雅哉の心境とかいかがでしたでしょうか?

お客様C男性:そうですね、彼は網膜色素変性症という病気と伺ってまして、徐々に視力がなくなっていく、で、私はある時弱視の時期がありまして、網膜剥離で視えなくなってしまったんですけど、まぁ視えなくなったという経緯としては、私は全く視えなくなった時よりも、最初に弱視になったとき、その時が一番辛かった。というのがありました。最初に雅哉さんは杖を持つのをすごく拒んでいましたよね、よく杖を使って歩けるなぁって、私はちょっとできないなと思ったんですけど、やっぱりどこかで「俺はまだ視えてるんだ!」っていう思いがあったと思うんですよね。私の場合は弱視の時も辛くて、かえって見えなくなった時のほうがあっけらかんとしてまして(笑)それほど落ち込むという事はありませんでした。ただやっぱり、出来ていたことが出来なくなったり、車も運転してましたし、そういうことができなくなった時の辛さ、そういうのは共感してます。あと、これは映画を観て思ったことなんですけど、大切なものを失うことの辛さ、そういうところは確かに「そうだな」ってすごい感動したところではあります。

-ありがとうございます。先ほどのお客様のお話ではないですけど、映画を通じて、視覚障碍者の人への、皆さんご覧になられた方は、心を寄せていただいたらそれだけでもう何か、日常生活で、見かけた時に声をかけるとか、そんな小さなことからでいいんじゃないかなって思いますので、そういう自分ができるちょっとしたことで、「光」を広げていっていったらいいなと思います。はい、では今日はお名残惜しいですが今日のトークはこの辺りで終わりにしたいと思います。皆様ご来場いただきましてありがとうございました。そして、早織さん、正子さんもありがとうございました。

(会場拍手)

9/24(日)『光』早織さん、田中正子さん舞台挨拶

(写真:阪本安紗美)

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