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1/27(土)『風の波紋』小林 茂監督トークショー(後半)

この映画は「回復(Recover)」のような気がします。

1月27日(土)10:30-映画『風の波紋』上映後、小林 茂 監督をお招きしてトークショーを開催致しました。
風の波紋トークショー
ゲスト:小林 茂 監督(小林)
進 行:進 多賀彦…CINEMAChupkiTABATAスタッフ(-)

-ありがとうございます。さて、今日はせっかくの機会ですので、お客様の中で、小林監督にご感想、ご質問がある方はいらっしゃいますでしょうか?

お客さんA女性:ヤギを解体されてましたが…よく田舎に行きますと鶏を絞めたりとかありますけど、そういう感じなんですか?

小林:本編に登場する今井明夫さんはヤギの専門家で、小学校でヤギを飼う斡旋をしています。危ないという理由で角を焼いています。生まれた雌ヤギは小学校に貰われていきましたけど、10月には種付けされてその翌年の3月には出産するんですよね。一年間でちょうど生命サイクルを体験できる。木暮さんたちも今井さんから、最初飼うには人に慣れてるヤギがいいというので、学校で飼われたヤギをもらって来てるんですね。「ヤギにも学歴が必要だなぁ。」って言ってました(笑)

それで、外で飼うぶんにはいいんですが、冬は家の中に入れないといけない。当然入れる場所が限られますから、歳をとったり乳がでなくなったヤギを自家屠殺して食べる習慣があります。今井さんも、家畜は最後は全部食べてあげるんだと子供たちに教えているそうなんですけど、雪が降る前の行事として謝肉祭のように感謝してからいただくということなんです。映画では「いただきます」「おめでとうございます」も言いますね。木暮さんも「臭みがない、柔らかいね」と言ってましたけど、僕もご馳走になりまして大変美味しかったです。

僕の家も小さい時はヤギを飼ってましたし、もちろん鶏を絞めた経験もあるんですけど、でも今はそういった感覚を忘れてますよね。だから僕もこの撮影を通して「やっぱり命をいただくんだなぁ」というのを再発見した気がしております。よろしいでしょうか?

風の波紋トークショー

お客さんA女性:ありがとうございます。とてもきれいに撮られてて、あのあとでヤギはこうなったんだなぁって(笑)命をいただくっていうのを…ありがとうございました。

小林:きれいですよね(笑)屠殺のシーンはあえて使ってないんですけども。はい。ありがとうございました。

-ありがとうございました。ほかにございますか?

お客さんB男性:この映画を観るのが実は2回目なんですけど、観た後すごくお腹が空くなと思いました(笑)

(会場爆笑)

小林:野沢菜の漬物、皆自慢気に「うちは焼酎入れたりもする」とか家で味が違うわけですよね。それから冬話ちゃんに「好きなものは何ですか?」と聞いたら「ごはん」と答えてね(笑)先週、天野季子さんのライブで北海道のオホーツクに行きました、そこはホタテが有名なんですね。漁協であげたてのホタテをぱっと焼いて、それを食べればいいのに冬話ちゃんはごはん食べてました(笑)

(会場爆笑)

小林:僕は天野さんのお父さんとたまたま知り合いでした。「豪雪地帯で映画撮ってるようだけど、娘が移住してんだって。会いに行ってくれないか?」って。というわけで会いに行ったのが最初です。あるとき彼女が古い足踏みオルガンでオリジナル曲をとっても綺麗な声で歌ってらっしゃっててね。それで僕は「映画のために音楽をつくって欲しい」と手紙を書いたのです。ただし、使うかどうか、映画がいつできるかどうかも分からないというあやふやなものだったらしいんですけど。こないだのライブで彼女曰く「身の回りにある自然や生活とかそのようなものすべてを自分の体を通って出た声」とのことでした。ところでご覧になるのは2回目ですか…何でまた観たいと思われたんですか?

お客さんB男性:家が近かったというのと、小林監督が今日いらっしゃるということだったので。来た甲斐がありました。ありがとうございました。

-ありがとうございました。では次の方どうぞ。

お客さんC女性:私は試写会を含めて今日で8回目です(笑)だから全部の場面のセリフとか覚えちゃって観たんですが、私は鬱病に悩まされて自分で命を断とうと思ったこともありました。この映画のテーマは「生きる力」と「自然にはかなわない」という気がして、今、使い捨ての、便利な時代を生きている人たちに是非観ていただきたいというか、生きていることがこれだけ大変なんだけど人とのつながりもすごく大事なんだよっていう…電波の世界だけでつながるんじゃなくて、本当に付き合って生きていくのが大事なんだよってことを言っている映画だと私は思っています。私の娘が障害持ちで、夜間中学や合同保育も通ったんですけどそういう所の人とのつながり、そのつながりをもった映画だなと思いました。小林監督にはいつも元気をもらっております(笑)これからもどうぞよろしくお願いします。

-では、次の方で最後とさせていただきます。

お客さんD女性:私はこの映画が好きで、3回目になります(笑)毎年1回ずつ観られてすごく幸せだなと、そしてこの先も観させていただけたらと思っています。私も監督と同じく実家が新潟で柏崎という雪が少ないところですけども、この映画を観せていただいて、新潟の…というより日本の自然とか、鳥の声とかあと人間の温もりというのがすごい伝わって来て、いつも心が癒されます。『阿賀に生きる』も好きな映画で、先月観ることができて、人生でまた何回か観たいんですけど、本当に美しくて温かい映画をありがとうございます。

細かい部分でお聞きしたい事が2点ありまして、この映画って最後のクレジット以外で、最初にもプロデューサーの方とか、監督とか撮影の方のお名前が出てるので、ちょっと普通とつくりが違うなってところと、劇中のトキのお芝居や、冒頭の子どもの狐の芝居とか、神楽の場面は最初から想定されてから入れられたかどうかをお聞きしたいと思います。すいません、細かくて(笑)

小林:3回観てらっしゃるから質問が違いますね(笑)冒頭にスタッフ名が出てくるのは、外国の映画ではよく見かけるスタイルですけど、これは冒頭に映画をつくった人間がいるということを意識してもらう狙いですね。もうひとつのお芝居や神楽の場面は、僕が設定しました。雪が深くなったときならではの『雪渡り』という宮沢賢治の童話があるんですね。それをぜひ子ども達に体現してもらいたいと思ってその1シーンを再現しました。それから劇団ハイロは「ハイローハイロー♪原発ハイロー」という歌を歌っている(笑)

-そのハイロ(廃炉)なんですね(笑)
風の波紋トークショー
小林:「白雪姫と7人の小人たち」の歌「ハイホー♪」が彼らにとって「廃炉ー♪」と聞こえたそうです(笑)それで原発反対集会の前座で5分くらい寸劇をやるんですね。トキですから福島に飛んで行き、今の現状はこうだ!ってことを演じられるわけですけども、それを集会で撮ったんじゃぁ面白くないと思って、池の周りがいいんじゃないかなって思って…ただ僕があの衣装を見たのは初めてでした。また子どもまで連れてくるとは思いませんでした(笑)これは7月の早朝に撮りました。ちょっと時間が長くなってしまいましたね。

-(映画のパンフレットを出す)こちらのパンフレット、先ほど質問された以外の映画にまつわるエピソード等が沢山詰まった一冊です。本日お買い上げいただいた方は何と!小林監督からサインをいただけるということなので是非お買い求めください。天野季子さんのサウンドトラックCDもございますのでこちらも宜しくお願いします。

小林:(CDジャケットを出す)これはね、サウンドトラック(音楽)だけつくるつもりだったんですが、天野さんに「音楽代がいいか、CDを作るのがいいか」と聞いたら「CDの方がいい」と言われました。しかも天野さんの「ファーストアルバムにしたい」とも言いました!なので全曲録り直して…この映画に使った音楽もボーナストラックで入ってますけど、彼女の他の作品も入っています。『めざめ』というタイトルのアルバムですけど、僕は寝るときに聴いてます(笑)

(会場爆笑)

-最後に、小林監督からのお知らせです。
風の波紋トークショー
小林:僕が助監督を務めました知る人ぞ知る柳澤寿男監督の本が新宿書房から出ます。まだ監督を知らない方が沢山いらっしゃいます。それを映画評論の方や様々な人が「これは絶対残しておくべきだ」ということで。本の販売に合わせて2月からシネマヴェーラ渋谷(ユーロスペースの上)で監督特集上映があります。機会がありましたら是非観に行ってください。お願いします。

-こちらからも宜しくお願いします。それでは次の上映時間が迫って参りましたので、これをもちまして、トークショーを終了させていただきます。皆様どうもありがとうございました。

(会場拍手)

風の波紋トークショー
(写真:阪本安紗美)

前半の記事はこちらです。

【関連リンク】

映画『風の波紋』公式サイト
 

天野季子さんのアルバム『めざめ』
 
民宿里見

全国山羊ネットワーク

書籍『そっちやない、こっちや 映画監督・柳澤壽男の世界』 (amazon)

2018/2/3(土)-16(金)柳澤寿男監督特集上映:シネマヴェーラ渋谷 (シンラ.net)

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