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10/28(土)『地球交響曲 第八番』龍村仁監督トークショー

10月28日(土)、映画『地球交響曲 第八番』上映後に、龍村仁監督を招いて舞台挨拶を開催致しました。

龍村仁監督舞台挨拶

ゲスト:龍村 仁 監督(龍村)
進 行:平塚 千穂子…CINEMAChupkiTABATA代表(-)

-では、監督、ご準備が整ったようですのでお呼びいたします。監督実は、先日骨折されてて杖をつきながらのご入場になりますが、龍村仁監督です!皆様拍手でお迎えください。

(場内拍手)

龍村:よいしょ!(椅子に腰掛ける)

-まず、入院されたと聞いて驚いたんですけど、すごい回復力…「回復力ではない」というお話を先ほどの打ち合わせで伺ったばかりでした(笑)元気そうで皆さん安心されたと思うんですが、今日はお越しいただきましてありがとうございます。

龍村仁監督舞台挨拶

龍村:どうもどうも。今日は皆さん本当にありがとう。

-監督のほうからできるだけ、皆さんからご質問を受け付けるようにと仰せつかっておりますので、皆さん遠慮なく手を挙げてご質問いただきたいと思うんですが、いかがでしょうか?まず監督から一言いただきましょうか。

龍村:はい、右の腰の粉砕骨折で手術をしまして、4日目くらいで退院して歩いてました。私はここ7年、都内の移動は全部自転車なんですよね、そこで降りるときに横滑りしてしまったんです。そのあと立とうと思っても動けない。そしてそのまま救急車で救急病院に連れて行かれて、すぐにレントゲンを撮ったら、大腿骨の一番先端の丸いところ、骨盤と一緒になってる…そのレントゲン写真がありますけど(笑)それが砕けてるというものでした。「すぐ手術しないといけない」ということで生まれて初めて麻酔の手術を受けました。そのあと4日で退院したのね。

-もう、お医者さんの言うこと聞かずに出て来ちゃったんじゃないかと思いましたよ(笑)

龍村:そんなことはないんだ(笑)手術を受けてからは自分が何やっているのかがわからなくなっていたわけ。もちろん骨折の経験はあるのよ、俺は大学の時にラグビーやってたから。大学出てからも続けていたから右肩の骨が折れてしまって…これは杭をぶち込んで治したことがあります。

-このレントゲンのお写真と書類、皆さんに回覧してもいいですか?

龍村:悪趣味だけど、どんな手術か見た方が分かるから回してもらっていいですよ(笑)

(場内笑)

龍村仁監督舞台挨拶

龍村:麻酔受けてたからどのような手術を受けたのかは分かりません。細かい説明は医者からはもらってないけど「このままだと車いす生活になります」ということで、骨の砕けた部分に人工物をぶち込んで…。

-生身の人間と、先端技術…骨盤のところに人工物ががっつりと突き刺さっている感じですね。

お客様A女性:私、膝がチタンの人工関節なんですけど、これは何の材質でできているんでしょうか?

龍村:これは…(何でできているのか)よく知りません(笑)

(場内笑)

お客様A女性:私はこの膝で3週間入院しましたけど、4日で出られたんですね!

龍村:出られたというか、追い出されたんですよ(笑)

-動き回ってたらしいですよ(笑)

龍村:ちょっと不思議な感じがあったの。麻酔がかかってどんな手術がされてるのかも知らないで、目が覚めたときに、患部を医者のみんなが見てるんだよ、その状況がなんだか分からないけど、天使に会ったという感覚じゃないんだけど、そういう異次元な感覚があったんです。それが終わったら「すぐに歩け」なんです。歩いて流すっていうのかな、手術の翌日から病院の中をただ歩くだけです。ずっと歩き続けてまして、今も一応杖ついて歩いてるんだけど、「いかにも」って感じで杖をついて歩いていると、周りの皆が「大変ですねぇ」と言ったりやさしくしてくれる姿が面白くてね(笑)これがなくてもスタスタと歩けるんです。

(場内笑)

-スタスタ歩いているのは先ほど拝見しました。杖は悪戯で持ってるんですね(笑)

龍村:手術後、とにかく歩くしかなかったんだけど、最初は患部が痛いわけですよ。ところがその痛みを感覚的に「なし」にしようとすると、痛みってこの部分だけの問題じゃないのね。身体全体のバランスの問題になるってわけ。それで歩き方っていうのがあって、歩くことによって、「痛い」という感覚があるときは、身体のどこかで何かが抵抗しているわけね。ところが歩いているうちに痛くなくなるんだよ。「痛い」というサインを歩くことで消すということは、この人工のものと、生身のもののバランスをとるときに、実は身体全体を整えないといけないということなんです。痛みがなくなったということは、その局所を治療したからということではなくて、身体全体のバランスをとったからなんです。

龍村仁監督舞台挨拶

-その話を聞いて、監督と『第八番』に出てくるヴァイオリンの駒が一緒だなって思いました。

龍村:それは摂理だと思うの。「痛み」はサインである。「痛み」を取るのに薬を用いるのかといえば、そうではなくて、全体のバランスを整えるにおいて、「痛み」がすっと消えるようなそういう歩き方とか、そういうのを見つけていく必要がある。薬を頼ると余計痛くなるんじゃないかって思っているわけ。

-病気とか怪我とかが全部そういうバランス調整を試されているって先ほど(トークショー前に)おっしゃってましたけど…。

龍村:人間の身体ってのは自分でつくったものではありません。長い年月を経て人間の体になったというものですから・・・それが「痛い」っていうサインでしょ?そういうのを今回教えられたなぁって思ったんです。

龍村仁監督舞台挨拶

-ありがとうございます。お時間も限られてますので、せっかく監督と近い距離で交流できますので、是非聞きたいことがありましたら遠慮なく…どうぞどうぞ。

お客様B男性:作品をおつくりになったきっかけを聞きたいのが一つと、シリーズそれぞれ、誰が出て〜という感じで構成もできてらしたんですか?それとも各々シリーズを順番に、徐々に出来上がったものなのですか?

龍村:前もってそういうのが決まって撮ってないんです。出演者をどのように選んでいるか…「直感とご縁」です。先にシナリオや言いたいことがあって、そのことについて色々情報収集して、この人とこの人に出演していただく…一切ないです。「人」のドキュメンタリーであることはありますけれども、その人がこの映画にふさわしい人であったかは、「ご縁」があるかどうかとしか言えません。あとは「直感」です。だって、『第一番』の時なんかどんな映画になるか分からないし説明つかないわけですよね、『地球交響曲』としてのコンセプト(地球は大きな一つの生命システムであり、私たち人類もその中の一つとして生かされている)はありますけど、この出演者とどのように出会ったかというの出会いについては不思議なことが沢山あるんです。もうそれは説明の仕様がないです(笑)

-だそうです(笑)ありがとうございます。他、奥の方も手を挙げていらっしゃいましたが。

お客様C女性:私、それ聴いて益々嬉しかったんです。「直感とご縁」があると思っていて、今日私がここに来れたのもそうですし、ある人がきっかけでこのシリーズを観ることにもなりました。質問したいことは小さなことなんですけど。

龍村:どうぞ、どうぞ。

お客様C女性:劇中の字幕<宇宙音>っていうのがあったんですけど、あれは何なんでしょうか?

-エンドロールとかで「ピュウーン」と鳴る音です。

龍村:そんなの入ってたっけ(笑)

(場内笑)

-「ピュウーン」「ピュウーン」って、高い音です。

龍村:皆さん私にアイデアがあって、それに相応しい音を入れているように思われてるかもしれませんが、そうではなくて、ああいう音は、いろんな局面で聴こえるわけ。それも「直感とご縁」ということになりますね。

お客様C女性:宇宙にああいう音があるんだと思いましたけど、そういうわけではないんですね?

龍村:いや、周波数でそういう音は聴こえますよ。人の可聴領域で聴こえているかというとそうではないという事なんですね。

-前作(第七番)に出てくる鯨の声とか、イルカの声とかにも近い印象ですけどね。

龍村:そうだね。ひょっとすると鯨の声が耳に残ってたのかもしれないなぁと思いますね。

-今回(第八番)は「宇宙の声が聴こえますか」ということで「聴いているのは樹です」というナレーションから始まりましたからね。

龍村:可聴領域では聴こえませんが、それに近い自然界の音というのはありますね。そういう意味ではイルカや鯨の音波は近いんだと思います。でも、皆さんは音は「聴く」ものと思っていらっしゃると思いますが、鯨たちは音を「見る」んです。

-音を「見てる」というのは…どういう事なんでしょうか?

龍村:音によって世界を見てる…認識しているという事です。何故かというと、ここから音を発信して、そしてそれが返ってくる反響を見える領域…「像」すなわち形に持って来る能力が鯨の凄さですよね。水中で鯨の声を聴いた時にそういう感覚が出てくるんですね。今日は鯨の話じゃないんですけど(笑)普通音は「聴く」もんだと思うじゃないですか。では、観音様は何で「観音」というのか、音を「観る」ということだと思います。

-はい、あと5分だそうです(笑)じゃぁ、他にも…。

龍村仁監督舞台挨拶

お客様D女性:一番最初の神社が災害で破壊される前の日に、雨がすごい降っていて雷が鳴った時にソプラノの音が…女の人の声が聞こえるみたいな…それはどんな音だったんだろうと凄い聞きたかったんですけど。

龍村:それを言ったのは天河神社の宮司です。「なんか分からないけど女性の歌声みたいなのが聴こえてきた」って。俺は「さもありなん」って思ったの。こういうシンクロニシティがあるわけ、あの声は誰の声かって鈴木慶江ちゃん(すずきのりえ:ソプラノ歌手。彼女の唄は地球交響曲の挿入曲となっている)の声なんですよ。慶江ちゃんはずっとイタリアのミラノにいて、帰国後に紅白歌合戦に出演された人なんです。当時ミラノでたまたま俺の弟のアトリエがあって、そこに(鈴木慶江さんが)来てたんで、絵描きの弟が「この女の人の声を聴いて」と言って曲をかけたわけね。弟が俺にそんなことを言うなんて珍しいなぁと思いましたけど。その声が素晴らしいっていうのは俺の頭に残りましたけど…それで天川神社の宮司が祭壇を撮る前に「女性の神楽が聴こえた」という言い方をしたんです。で、その時にどんな声だったんだろうと思った時に、弟から聴かされた鈴木慶江ちゃんの声…スキャットなんだよ。スキャットというのはどういうことかというと…普通オペラ歌手は意味を込めた言葉を歌うんだけども、弟から聴かされたそのCDにバッハの『アヴェ・マリア』の歌が入る前の部分にああいう意味のないスキャットが入ってたわけよ。何故そのスキャットを入れたのかというのは、俺は痛いように分かったわけです…ちょっと話が長くなっちゃったかな(笑)

(場内笑)

龍村仁監督舞台挨拶

龍村:何で歌の前にあんなスキャットを入れたんだろうというのが鈴木慶江ちゃんとの最初の出会いだったんだけど、阿古父尉(あこぶじょう)という能面を撮る上でどういう撮り方をしようと思って、ちょっとあざといなぁと思ったけど紀伊長島神社の大きい楠の祠に能面を置いて撮っていました。

-その時にソプラノを重ねてたのが…

龍村:そう。いやだなぁと思ってましたが「樹の精霊が宿っている」というのを可視的にも表現しているんです。珍しい事やってんなと自分で思います(笑)でもこれを撮ったのはカメラマンなんですよ。下からズームインしていって、で、最後に阿古父尉のお面がそこにあるという画なんですけど、これも俺が「何秒くらいでズームして」とかそういう指示を一切言わないから。その(時間の)長さと慶江ちゃんのスキャットの長さが計算したかのように収まってて、何だかなと思ったけど。そうなってしまったんです。

-先ほど監督が「直感とご縁」とおっしゃってましたけど、そういった話を聞けば聞くほど全て仕組まれてたんじゃないかというくらい色々なものが引き合わされて監督が交響曲を描いているんじゃないかなって思わされます。他にも監督の不思議なエピドソードが沢山ありますが、お時間が来てしまいました。

龍村:いやぁ短いね(笑)

-次の映画の上映時間も迫っておりますので今日はここまでとさせていただきます。監督の『地球交響曲』シリーズも25周年を迎えられたということで、11月はシネマ・チュプキでも『第四版』から『第三番』『第二番』『第一番』と、また旧作の上映をさせていただきますので、また観たいという方は是非このシアターにお越しいただけたらと思います。龍村監督、今日はご登壇ありがとうございました。

龍村:ありがとうございました。

(場内拍手)

龍村仁監督舞台挨拶

(写真:阪本安紗美)

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