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2022年04月04日

5月「ウクライナ難民支援上映」に至った経緯

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5月に上映する全作品について、経費を引いたチケット売上利益全額をUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)に寄付します。
館内に募金箱も設置しますので、映画のご鑑賞と合わせてご支援のご協力をお願いします。 
UNHCRについて
https://www.japanforunhcr.org/news/2022/Ukraine-report

 

「ウクライナ難民支援上映」に至った経緯

毎日報道される、目を疑うようなウクライナで起きている戦争のニュースを目の当たりにして、現地に行って何かできるわけでもない…映画館主として今、何をすべきだろう?何ができるだろう?と模索していました。

そんな中、今村昌平監督の息子さんの今村広介さんが、突然、チュプキにやってきました。「親父の遺した『黒い雨』を上映してもらいたい。配給収入の全額をUNHCRに寄付しようと思って、いろんな映画館に話をしにいったんだが、どの映画館も先々までプログラムが決まっていて、ダメなんだ。チュプキで上映できないだろうか?」

何かできないか?と考える一方、私の中には「コロナに2年潰されてきたゴールデンウィーク。やっと、まん防も終わって座席の人数制限も開放し、ようやくゴールデンウィークらしいゴールデンウィークが迎えられる!集客の見込める人気作を!」と考える自分もいて、せめぎ合っており、なかなか決めきれずにいました。なので、当館は、5月のプログラムすら組めていないような状況でした。

今村広介さんの「正直、ウクライナとロシアの国のことはわかんない。ロシアが一方的に悪いわけでもねーかもしれない。だけど、戦争が起きて人が殺されて、難民がいっぱいいて困ってる人がいるのは確かだろ?だから、難民の支援に当てたいと思ってさ…」そんな、歯に衣着せない広介さんの言葉が気持ちよく腹に落ちて、即決しました。「5月、うちでやれますよ。やりましょう!」

そして、5月は『黒い雨』のみならず、ウクライナの難民支援に全作品を投じよう!と決めました。

ちょうどその時、アジアンドキュメンタリーズさんの「ウクライナ緊急支援プロジェクト」のお知らせが流れてきて、バリケードの上で、ウクライナ色のピアノを弾く少女のビジュアルと「自由への闘い」という文字が飛び込んできました。アジアンドキュメンタリーズさんには、2年前のミニシアター緊急支援プロジェクトでお世話になり、その時から会員になっていたので、支援対象作品をすぐに観ました。

『ピアノーウクライナの尊厳を守る闘いー』というタイトル。親ロシア政権が倒れた2014年に起きた革命の頃の記録でした。ピアノをバリケードから救い出す人々の姿。ロシア側のスピーカーから流れる大音量のポップミュージックに、一人ピアノで闘う少女の真っ直ぐな演奏に涙が止まりませんでした。戦争が起きるまで、ウクライナでこんなことが起きていたなんて、全く知らずにいました。ドキュメンタリーは、本当に生きている人の記録です。今、彼女たちはどんな想いでこの戦争の只中にいるのだろう?いろんなことを思いました…

そして、「映画館にできることは、人の心を揺さぶることだ!」と改めて思ました。
彼女の奏でるピアノの音色は、怒りや悲しみ、叫びを超えて、切実な祈りのようにも聴こえました。人々の心を震わせ、何かを動かすに違いない。この音色は、スマホやタブレットの小さなモニター越しではなく、フォレストサウンドの音響設備を搭載した当館のスクリーンで、是非、聴いてほしい。

アジアンドキュメンタリーズさんは、日本のドキュメンタリー文化の衰退に、危機感を抱いた映像制作者の有志が「ドキュメンタリーは絶対に儲からない」という業界関係者の声を振り切って設立した動画配信業者です。しかし、2年前のミニシアター緊急支援プロジェクトの時に「ドキュメンタリー映画文化を支えてきたのは、間違えなくミニシアターだ。」とおっしゃっていました。代表の伴野さんは、ミニシアターも愛する人。配信と併走して上映もやりたい、いずれミニシアターも経営したい!と、おっしゃっていたのを思い出しました。

「『ピアノーウクライナの尊厳を守る闘いー』をうちで上映させてもらえませんか?」

迷わず声をかけました。伴野さんは、すぐに動いて下さいました。版元に確認をとり、上映の許可をとってくれたのです。そして「これはまさにアジアンドキュメンタリーズが配給する劇場興行ということになりますね!」と。今後の可能性の広がりも感じてくださっているようでした。
こうして、当館で劇場未公開作品を、はじめて上映させていただけることになりました。

当館では、ユニバーサル上映の準備にもすぐ動き出しました。41分の短編映画なのに、声優ボランティアのキャスティングをしたら、登場人物が23人もいたとの連絡がありました。でも、このプロジェクトの準備に携わる人々が皆、イキイキしているように感じます。映画を通じて、少しでも支援ができることに、命を燃やしているように感じました。

今月の名言は、チャールズ・チャップリンの言葉にしました。
「私たちは皆、互いに助け合いたいと思っている。人間とはそういうものだ。相手の不幸ではなく、お互いの幸福によって生きたいのだ」

これから音声ガイドも作っていきます。ウクライナとロシアの間にどんな時が刻まれていたのか?今まであまりにも知らなかった。そのことを申し訳なく思いつつ、勉強してナレーション台本を書きたいと思います。

今、私たちのできることを精一杯。

シネマ・チュプキ・タバタ
代表・平塚千穂子

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